昔の映画に想いを馳せる。ドイツ映画『最後の人』

創成期の映画に興味を持ったのは、猪俣勝人、田山力哉著『世界映画名作全史』を手にした時。

1974年初版の本で、それぞれの映画の解説を読む度、観てみたいと好奇心をかきたてられたものでした。『最後の人』は1924年ウーファ、ムルナウ監督エミール・ヤングス主演の映画。古すぎて諦めていましたが、『淀川長治名作DVDコレクション』(もちろん全巻そろえました。)にあり、これは嬉しかったです。

ホテルのドアマンの威厳ある制服が彼のステイタスであり誇りだった男性が、高齢となりその任が果たせないと考えた支配人から清掃の仕事に異動を命じられる。人生終焉の悲哀がにじみ出ている作品でした。解説すらない無声映画でありながら情感が伝わり良かったです。が、問題はラスト。命を助けた富豪からの遺産相続で裕福になりハッピーエンドとはなんとも軽薄。この当時ドイツは第一次大戦後多額の賠償金を命じられ、映画で外貨を稼ごうとしていました。ヴァイマール政権下のウーファはとても良質の映画を作っていましたが、ハッピーエンドの好きなアメリカの要望に応えてラストを変えたとか。もう一つ失意のまま生涯を終えるエンディングもあるようなので、そちらをみてみたいです。ナチス政権下になり、ナチスのプロパガンダとなってしまった映画会社ウーファ。時代背景、個々の人生も絡めて色々考えさせられる映画でした。