先日中古、廃盤レコードフェスに行ってきました。傷もあり聴くとプチプチと雑音が入ります。ですが、それすらも趣きがあるというか、音もCDより重く感じられ改めてハマってます。ウイルヘルム バックハウス演奏のベートーヴェン熱情、悲愴、月光はとても素晴らしいです。ヒットラーがファンだったということで、戦後ナチスの協力者と非難されアメリカでの演奏を拒否されたとか。でもその素晴らしい演奏はやがて世界で絶賛されます。
このレコードを聴くと、明治大正時代に活躍された久野久さんを重ねて聴いてしまいます。日本のピアニストのパイオニア、遅すぎるピアノとの出会いでしたが、人よりも何十倍練習して芸大教授まで上り詰めました。久さんが練習した後は鍵盤が血で真っ赤に染まっていたという逸話が残っています。叩きつけるような激しさでこのベートーヴェンを演奏したのだなあと思うと、迫力の中にある切なさが伝わってきます。ベルリン留学中失意の中38歳で命をたってしまった久野久さん。レコードを聴きながら、在りし日の二人の情熱を過ぎ去った時代と共に味わっております。
カテゴリー: 映画・文学
郵便探偵ロストレターズミステリー
最近ハマっているドラマです。Amazonプライムで見つけました。最初は何気なく見始めたアメリカのドラマですが、同じ作品を何度観ても飽きません。2014年にホールマークチャンネルでパイロット版が放送されてから今年5月アメリカでは20作目の新作が放送されたとか。アマゾンプライムではその内15作観られます。10年以上かけて(間コロナの影響もあったかと思いますが)丁寧に作り上げてきた作品たち。出会えて本当に良かったです。様々な事情で配達できなかった郵便物を、郵便局に勤める4人のメンバーが受取人を探し出し、手紙を届けると同時に幸せも届けるという、ちょっと大人のおとぎ話のように聞こえるかもしれませんが、いえいえとても良く練られて作られております。音楽も最高、キャストも素晴らしい。日本での放送は時系列がバラバラなので、これを順番通り見直すのもまた楽し、です。主人公のオリバーとシェインが出会ってから結婚するまでそんなに時間は経過していないのに撮影には12年という歳月が流れているため、ちょっと老けたかなという印象はありますが、とにかくブレず役を演じきってくれているので、感謝と拍手です。大好きな作品です。残りの作品も早く観たいな。Amazonさんよろしく。
昔の映画に想いを馳せる。ドイツ映画『最後の人』
創成期の映画に興味を持ったのは、猪俣勝人、田山力哉著『世界映画名作全史』を手にした時。
1974年初版の本で、それぞれの映画の解説を読む度、観てみたいと好奇心をかきたてられたものでした。『最後の人』は1924年ウーファ、ムルナウ監督エミール・ヤングス主演の映画。古すぎて諦めていましたが、『淀川長治名作DVDコレクション』(もちろん全巻そろえました。)にあり、これは嬉しかったです。
ホテルのドアマンの威厳ある制服が彼のステイタスであり誇りだった男性が、高齢となりその任が果たせないと考えた支配人から清掃の仕事に異動を命じられる。人生終焉の悲哀がにじみ出ている作品でした。解説すらない無声映画でありながら情感が伝わり良かったです。が、問題はラスト。命を助けた富豪からの遺産相続で裕福になりハッピーエンドとはなんとも軽薄。この当時ドイツは第一次大戦後多額の賠償金を命じられ、映画で外貨を稼ごうとしていました。ヴァイマール政権下のウーファはとても良質の映画を作っていましたが、ハッピーエンドの好きなアメリカの要望に応えてラストを変えたとか。もう一つ失意のまま生涯を終えるエンディングもあるようなので、そちらをみてみたいです。ナチス政権下になり、ナチスのプロパガンダとなってしまった映画会社ウーファ。時代背景、個々の人生も絡めて色々考えさせられる映画でした。